宗教団体「エホバの証人」における宗教の信仰等に関係する児童虐待等に関する実態調査報告書
本調査についての経緯
2022年12月27日に厚生労働省は「宗教行為の強制は虐待である」とのガイドラインを公表し、この政府方針の表明を皮切りに多数のエホバの証人元信者や現役の信者(多くはエホバの証人2世3世)たちが、過去に受けた過酷な虐待、及び、現在も続く深刻な生活上の支障について声を上げ始めました。その一方で、何らかの対策につなげるためには、児童虐待や人権侵害等が起こっているのか、起こっているとすればどの程度起こっているのか、量的にもまた質的にも把握が未だ十分とは言えないと当弁護団は考えました。
このようなことから、当弁護団では、エホバの証人に関する各種問題(輸血拒否や苛烈なムチだけでなく、証言と言われる信仰の告白や伝道の強制、大学進学否定や忌避などの児童虐待の疑い)に関して、網羅的な実態調査を致しました。
調査について
調査は2023年5月2日から6月30日まで行い、合計583名(実質581名)から回答を得ました。
調査についての詳細は以下の報告書をご覧ください。
本調査へのご協力の先生方
学会から以下の先生方の協力を得て調査を行います。この場をお借りして先生方に感謝申し上げます。
本調査にご協力いただいている先生方
北海道大学教授・櫻井義秀先生、同助教・清水 香基先生
龍谷大学教授・猪瀬優理先生
佛教大学総合研究所特別研究員・山口瑞穂先生
京都府立大学文学部准教授・横道誠先生
ご回答くださった方への御礼
本来であれば、個別に御礼を差し上げたいのですが、この場での御礼になりますこと、ご無礼をお許しください。
ご回答を賜り、本当にありがとうございました。
中には、回答するのに「5時間かかった」とTwitter(現X)で報告される方もおられ、回答項目が多く難儀した方が大半だったと思われます。皆様のご尽力に心から敬意を評したいと思います。大変お疲れ様でした。
私どもでいただいたコメント全てに目を通しましたが、辛く、苦しいご経験に向き合って頂いてご回答いただいたのだと感じました。中には、当弁護団メンバーが涙なしには読めないようなご経験を書いて頂いた方もいらっしゃいました。
それでも、多くの方は「児童虐待をなくし、自分と同じような思いを次世代にさせたくない」という思いで振り返っていただいたのだと感じております。その忍耐や思いに最大限の敬意を示し、重ねて御礼申し上げます。誠にありがとうございました。
皆様のご回答にのせられた思いをしっかりと受け止めて全力で報告書を作成致しました。至らぬところも多かろうと思われますが、どうぞお時間の許す限り報告書に目を通していただき、ご意見、ご感想、言い足りなかったこと、さらなる情報提供などを賜われれば当弁護団の励みとなります。
本調査の利用に関して社会の皆様へのお願い
昨今 SNS 上での印象操作等により情報が拡大解釈されるなどして、何らかの社会問題についての指摘が、差別的発言やヘイトにつながるなどの事象が起こっています。
本調査は、宗教虐待 Q&A 及びこれに関わる児童虐待防止法等の基本的人権に関する法律等に基づいて行ったものですが、当弁護団は本調査に記載された情報が、個々のエホバの証人信者への攻撃的言動や差別的行動のために誤った利用をされる事態を決して望んでお らず、社会の皆さまが本報告書を利用する場合、特に以下の2点について、報道内容やご自身の言動等に十分ご留意くださることを強く希望いたします。
①エホバの証人信者の信教の自由を害しないこと
本報告書では、エホバの証人の内部での児童虐待行為や人権侵害を疑わせる事実を指摘 していますが、かかる事実を指摘することで、個々のエホバの証人信者が有する信教の自 由を害そうという意図は当弁護団にはありませんし、社会内においてそうした行動がないことを望みます。
②エホバの証人信者に対する偏見や差別的態度を助長する意図を有するものではないこと
当弁護団は、個々のエホバの証人の信者について、エホバの証人の信仰を持つことを理由に、一般社会において偏見や差別に晒されるべきではないと考えております。エホバの 証人の信者への差別的発言、態度、処遇などの社会的地位の不利益な取り扱い、その他一切のヘイトやその類似行為がなされることを望んでおらず、そのような意図で本書を作成したものではないことを明言します。社会の皆様が同じ思いでいて下さることを望みます。
報告書
PDFには目次を付しておりますので、目次を見ながらご閲覧ください。
なお、当弁護団では、報告書に関するご意見、ご感想、その他報告書に限らず情報提供などを幅広く募集しております。
こちらのフォームから、ご記入賜われれば幸いです。
情報を提供いただける方へ
上記のエホバの証人調査に回答できなかった、知らなかった方のために、エホバの証人調査を再開しました。その他、情報提供をいただけそうな方はこちらからご検討ください。
リンク、引用について
本ページや本報告書へのリンクは歓迎いたします。
報告書の奥付にも記載しておりますが、引用については以下にも明記しておきます。
本報告書の著作権は、エホバの証人問題支援弁護団に帰属しますが、著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)を遵守する限りにおいて、どなたでも利用することが可能です。
利用するにあたり、本報告書が、581名の回答者の被虐経験に基づき作成されたものであり、回答者が194の質問項目について苦しい経験を思い出してまで調査に協力した趣旨をよくご理解いただいた上で利用していただくようにお願い致します。
その趣旨についてあえて明言すれば、「自分たちのような経験を次世代にさせたくない」との思いに尽きると当弁護団は信じます。