信仰の告白を強制する行為に関する考察

本考察は、「宗教団体「エホバの証人」における宗教の信仰等に関係する児童虐待等に関する実態調査報告書」に掲載された内容をそのまま転載したものです。本報告書は2023年11月20日に公表されたものです。エホバの証人信者への迫害・ヘイトはしないようにお願い申し上げます。

第7 他者の前で宗教等を信仰していることを宣言することを強制する行為(いわゆる証言)

1 いわゆる「証言」に対するエホバの証人の考え方

本報告書で「証言」とは、布教活動(伝道)以外の機会に、信者ではない他者(知人・親戚・学校の先生、同級生等)に対して、自らの信仰を表明・説明することをいう。

エホバの証人は、ごく幼いころから2世等が学校等でエホバの証人の信仰を教師や同級生等に証言することを強く推奨している[1]

※なお本項は、後述する「第9 宗教の布教活動の強制」とも密接に結びついており、第9も参考にされたい。

2 宗教虐待Q&Aの記述

出所:宗教虐待Q&A

3 証言の経験の有無

証言の経験の有無

設問

友人や学校の先生などに証言(第三者にエホバの証人の信仰を告げることを指し、家から家やカートでの伝道ではありません)をしたことがありますか?

集計方法

エホバの証人の活動に参加した(関与させられた)のが18歳未満と回答した人を対象に作成した。

結果と考察

94%、524人が証言をしたことがあると回答した。

4 証言をした年齢

証言をした年齢

設問

図中に示します。

集計方法

エホバの証人の活動に参加した(関与させられた)のが18歳未満と回答した人で証言をしたことがあると回答した人を対象とし、横軸を年齢、縦軸を人数で作成した。

結果と考察

①多くが児童の時から始め、成人になっても続けることが量的に確認された。

6歳以前から証言を始めた回答が多いが、本調査の回答者は6歳以前に関与させられた回答者が多く、かつ、小学校入学時には校歌・国家の斉唱等の教団が「行うべきではない」と教える行事が多くあることを考えれば合理的である。

18歳で証言を終えたという回答が多いが、回答者の多くが高校卒業時に(エホバの証人は大学進学に否定的である)証言する必要がなくなったと考えると整合的である。

5 証言した目的

証言した目的

設問

どのような目的で証言しましたか?

あてはまるものをすべてお選びください。

集計方法

エホバの証人の活動に参加した(関与させられた)のが18歳未満と回答した人で証言を始めたのが18歳未満と回答した人を対象とし、横軸を「どのような目的で証言したか」、縦軸をその人数で作成した。

%の数字はそれぞれの回答人数を「証言を始めたのが18歳未満」と回答した522人で割った割合を示す。

結果と考察

①約93%が学校行事への参加制限を受けているために、学校の先生に理由を説明するための証言をしたと回答。

②約79%がクリスマスや誕生日などの指摘なイベントに参加できない理由を説明するために証言したと回答。

③他の項目にも共通するが、「行事参加の制限」が「証言の強要」につながるというように、エホバの証人内の特定の児童虐待が他の児童虐待を連鎖的に生み出し得る構図が明らかになっていると考えられる。

(分かりやすい例としては、「行事参加の制限」→「証言の強要」→「これらをさせるため/これらをしなかったことによる鞭」というように、各児童虐待は連鎖しやすい構造になっていると観察される。個別回答における具体的な自由記載報告はこの点を裏付けている)。

6 教団関係者からの指示・推奨の有無

教団関係者からの指示・推奨の有無

設問

あなたは、エホバの証人の信仰を持っていないのに保護者や教団関係者から指示・推奨されて証言をしたと感じたことがありますか?

集計方法

エホバの証人の活動に参加した(関与させられた)のが18歳未満と回答した人で証言を始めたのが18歳未満と回答した人を対象に作成した。

結果と考察

①約80%、415人が信仰を持っていないのに証言をしたと回答した。

信仰を持っていないのに児童が証言をする理由には、保護者や教団関係者からの強制以外の他の合理的理由が存在し得ないと考えられる。

②この指示・強制という心理的虐待が行われたのちに、それに従わないために鞭というさらなる身体的虐待につながり得る構造になっていることはすでに指摘のとおりである。

7 自分がエホバの証人に関与していることを知られたくなかったか

自分がエホバの証人に関与していることを知られたくなかったか

設問

証言の際、あなたは自身がエホバの証人に関与していること(信仰していることを含む)を他者に知られたくない意思を有していましたか?(一つご選択ください)。

集計方法

エホバの証人の活動に参加した(関与させられた)のが18歳未満と回答した人で証言を始めたのが18歳未満と回答した人を対象に作成した。

結果と考察

①約89%、466人がエホバの証人に関与していることを「知られたくなかった」と回答した。

証言の強要は心理的虐待である所以といえる。

知られたくないのに児童が証言をする理由については、保護者や教団関係者からの強制以外の他の合理的理由が存在し得ないと考えられる。

②「知られることに抵抗はなかった」との回答は約10%であった。

8 証言の理由

証言の理由

設問

上記の証言の目的に関して、あなたが証言をしなければならないと感じた理由について、以下の中からあてはまるものをすべてお選びください。

集計方法

エホバの証人の活動に参加した(関与させられた)のが18歳未満と回答した人で証言を始めたのが18歳未満と回答した人を対象とし、横軸を「どのような目的で証言したか」、縦軸をその人数で作成した。

%の数字はそれぞれの回答人数を「証言を始めたのが18歳未満」と回答した522人で割った割合を示す。

結果と考察

①保護者の働きかけにより証言させられたことが量的に確認された。

宗教虐待Q&Aの構成要件を満たし、児童虐待に該当する可能性が高い。

②保護者の働きかけ以外では、出版物での記載(上記選択肢1)、長老・巡回監督等の幹部信者の働きかけ(上記選択肢2)、大会や集会における講演での指示・暗示(上記選択肢3)、周囲の信者の働きかけ(上記選択肢4)など、教団の関与も量的に確認された。

9 証言の経験に関する自由記述の回答例

設問「上記の証言に関して、 5W1H(いつ、どこで、誰が、誰に対して、どういった証言をしたか)を要素としてできるだけ詳しくご記入ください。もし証言をすることについて、長老や幹部信者から指導や推奨があったケースに遭遇されたことがある場合には、その点も併せてご記入ください。なければ「なし」とご記入ください。」という問に対する個別回答の一部を以下に示す。

小学校に入学する際練習させられたのは証言をすること。ひとつづつ出来ないことを言わされたが言えず手紙に書かされた。(今思えば私の意思であることを母は強調させたかったのでしょう)。

1年生でこっきけいよう=国旗の旗が上がると知らず眺めていたら同じ学校にいた2世の子にその子の母親経由で告げ口され母に鞭された。

20◯◯年少し変わった友達がいてクリスマス=キリストの誕生日でないことを話したら興味を持った子がいたので記念式に誘う証言をしました。

その経験を巡回大会で20◯◯年◯月にインタビュー形式で話した。

・初めての証言は◯歳、通っていたピアノ教室でクリスマスの歌が歌えない理由を先生に証言させられ、他の子が歌っている際はただ立っていました。◯歳で小学生になり同じクラスにピアノ教室の子もいました。「変な子」と知られるのが怖くなったのもあり、ピアノ教室はやめました。

・小学生の頃は校歌を歌えないクリスマス会に参加できない、運動会を欠席する等の理由を、先生や友人に証言させられました。

・出版物を先生に渡すと親に褒められました

・◯◯生の時補助開拓の時間が入らず、やむなく他の宗派のクリスチャンだった友人に書籍「若い人は尋ねる」から証言を試みたのが最後でした。危うく友人を失いかけました。

・◯◯生の時証言するという約束でバイトを許してもらい、バイト先で仲良くしてくれた人に片っ端から証言をしていました。

・小学校◯年生~高校◯年生まで、始業式・終業式や音楽の授業では校歌・国歌も歌えないし、なぜ歌わないのかと周りから言われるので証言せずに逃げることはできなかった。普段から学校の先生や周りの友人には自分がエホバの証人で一部の行事に参加できないことを伝えていた。

・学校での証言の仕方については集会や大会の実演等でも取り上げられていたし、家でもロールプレイングで練習させられていた。ただし自分で証言する時は人に教義を伝えたいとは微塵も思っていないので、淡々と「自分は○○できないんですーごめんなさいー」と言っていた。

1.学校で、校歌が歌えないこと、選挙に立候補できないこと、七夕まつりに参加できないことを証言しました。

2.休みの日に自分の学区域を奉仕していて、クラスメイトの家や先生のおうちに当たった時、自分がエホバの証人であることを証言しました。学区域で奉仕することは、長老や奉仕の僕に誉められました。

3.小学生◯年生でバプテスマを受けたので、会衆では優秀な扱いでした。集会や大会ではクラスメイトを信者に導くことを取り上げており、周りの信者は当然それを勧めてきました。そのため、クラスメイトを集会に連れてきたり、遊ぶ約束をして聖書研究をしました。

ありすぎて書けません

いつでもどこでも証言をするよう推奨されていた。

特に学校行事の不参加の時は証言を自分の口から信者である母親に強要された。

いつも地獄だった

エホバの証人が校歌・国歌を歌えないこと、武道を履修できないことについては既に知られており、母が学校に来て学年主任級と話すことが小中高とあった。

また、進化論の範囲が定期テストに出た際は、「進化論を信じていない」旨を欄外に書いて記入しないよう母から指示があったと記憶している。

本人の特定を避けるために「◯」の加工を当弁護団で行っています。

10 証言の強要等についての小括

(1) 多数の児童が「証言」と呼ばれる信仰の告白をしていたことが量的に確認された。

(2) 「指示・推奨されて証言した」・「信仰を持っていないのに証言した」との回答が約8割、自らの信仰を「知られたくなかった」との回答が約9割であり、自らの意思に反して証言をしていたことが確認された。「強制された」としか結論付けられない結果である。

また、信仰がなく、かつ、知られたくないのに証言を強要されるという事実は、証言というものが、「学校以外には他に所属する強い社会基盤が存在しないであろう子ども」においては、まさにその「学校」という最も濃密かつ数年に及び継続する人間関係の中で行われることを考えると、児童に対して定期的かつ長期間にわたり極めて深刻な精神的ダメージを与え続けるものである。

(3) 信者である保護者による子どもへの証言の強制は宗教虐待Q&Aに示された構成要件を満たし、児童虐待に該当する可能性が高い。

一方、教団が出版物や集会・大会などを通じて、信者の子どもによる学校等で証言について強く推奨し教えるという実態が確認されたものの、現在の児童虐待防止法を含む児童の保護を図る法制度を前提とすれば、教団の行為が直ちに「児童虐待」にあたるとは言えないと解され、信者である保護者による虐待行為を助長又は促進させる行為に対して何らかの法規制を及ぼす等の対策が必要ではないかと考える。

出典

[1]『王国宣教 19899月号 若い皆さん,学校で効果的に証言してください』

『目ざめよ!2002322日号 どうすれば学校の友達に友達に証言できるだろう』

『目ざめよ!20097月号 若い人は尋ねる-どうすれば自分の信仰について恐れずに話せるだろう』