エホバの証人に関する用語解説

本考察は、「宗教団体「エホバの証人」における宗教の信仰等に関係する児童虐待等に関する実態調査報告書」に掲載された内容をそのまま転載したものです。本報告書は2023年11月20日に公表されたものです。エホバの証人信者への迫害・ヘイトはしないようにお願い申し上げます。

3 用語の意味

本報告書においては、本報告書の理解にあたり不可欠となる主な用語につき、以下のとおり定義します(50音順)。また、その他の用語については、適宜、本報告書の文中において触れております。

用語

意味

エホバの証人

「宗教団体としてのエホバの証人」と「その個々の信者」の両方を意味し得るところ、本報告書では「宗教団体としてのエホバの証人」を指すものとする。

会衆

エホバの証人の宗教活動における信者らの最も基本的かつ緊密な単位で、居住地域ごとに設定され、数十人から100人程度の信者らで構成する集合体

忌避

エホバの証人及び信者らが、排斥処分又は断絶手続という2種類の正式破門処分を経てエホバの証人から離脱した人を「避ける」ことを指すものとする。なお、「避ける」とは、会話もせず挨拶もしないという文字通り徹底的に避けることを指す。家族である元信者に対してもほぼ同様のケースが多々見られ、教団は元信者家族に対しても同様の対応を強く推奨しており、エホバの証人からの離脱は信者家族との完全な関係喪失を意味する場合がある。

教団

エホバの証人の世界本部(米国を拠点とする)と同日本支部の両方を意味し得るところ、本調査は日本国内のみで行われたものであるため「エホバの証人の日本支部」を指すものとする。

教団世界本部

「教団」におけると同様の理由から、米国に拠点を置くエホバの証人の世界本部を指すものとする。

なお、同本部における最も権威ある最高指導者は「統治体」と呼ばれる、数名から10数名の合議体である。

教理

教団及び教団世界本部からの公式な宗教教義及び当該宗教教義に関連する教え

集会

・エホバの証人の宗教活動のうち最も基本的で最重要視されるもの。

・「王国会館」とよばれる宗教施設に会衆単位で集まりあい、教理を教えられるという活動。よほどの例外がない限り週に2回(週中の夜に2時間弱・土曜の夜か日曜の日中に2時間弱)行われる。

・集会においては「口頭の講話」や「実演」と呼ばれる寸劇調のデモンストレーション・選ばれた信者らが演壇で述べる「経験」の発表等により教理についての具体的教えや教団の指示が伝えられる。

・また、集会前後の時間に他の信者との交流をしたり長老からの個別の指導を受けることがあるなどエホバの証人内部の情報伝達の根幹をなす。同時に、「文字化されない口頭の講話・実演・経験談」等により教理の教えが強力に波及するため、客観的にみれば、一定の教えの実践等につき「教団側からの教えや指示があった」と明確に認定することを難しくさせる教育方法として成立・定式化されているという側面もある。

・この集会に参加するか否かは「エホバの証人としての活動をしているか否か」の最重要の指標として扱われる。

宗教虐待Q&A

令和4年1227日付子発1227第1号厚生労働省子ども家庭局長通知・別紙「宗教の信仰等に関係する児童虐待等への対応に関するQ&A」

信者

エホバの証人の各信者個人のこと。


審理委員会

排斥事由になりうる「重大な罪」の証拠があると判断される場合に、対象となる信者を排斥するか否かを決定するための臨時の組織体であり、会衆内に組織される。

審理委員会は、当該対象者が所属する会衆の長老3名で構成されるが、所属する会衆の長老が3名そろわない場合は、近隣の会衆から1名又は2名の長老や巡回監督(20程度の会衆を定期的に訪問し、会衆の長老や信者を指導監督(エホバの証人は、「励ます」「支援する」といった表現を用いる。)する役割をもち、大会を主催する立場にもある。)を招へいすることで構成される。

審理委員会では、対象者を弁護する者の参加は許されず、対象者を審理委員会にかけるのは会衆の長老であるところ訴追側と審理側(審理委員会での判断権者)の人物が同一人であるなど、手続保障の観点から大いに問題のある組織体といえる。審理委員会における審理方法自体が、虐待の温床になっているという意見もある。

大会

・集会よりもより大規模な信者の集まりであり、原則として年に3回(そのうち2回は10002000人程度、1回は1万弱から数万人規模の信者が集まる)。

・集会と同様、「口頭の講話」・「実演」・「経験」の発表等により教理についての具体的教えや教団の指示が伝えられる。さらに、集会に比して相当に大規模であり、かつ、より権威ある集まりとみなされるため、エホバの証人内部の情報伝達の根幹をなす。同時に、「文字化されない口頭の講話・実演・経験談」等により教理の教えが強力に波及するため、客観的にみれば、一定の教えの実践等につき「教団側からの教えや指示があった」と明確に認定することを難しくさせる教育方法として成立・定式化されているという側面があるという点も、集会と同様である。

断絶

・信者自身がエホバの証人ではなくなることを希望しその旨を教団側に書面等で意思表明して自ら同宗教を離脱すること。

・エホバの証人内では、バプテスマを受けたのちに同宗教を離脱するための正式な手段はこの「断絶」と「排斥」の2つの方法しか制度化されていない。

・後述の「排斥」は教団側から受ける「処分」であるところ、「断絶」は信者自身がとる「手続」であるのが原則である。

・排斥処分同様、断絶を経るとその後の「忌避」の対象となる。

長老

会衆内で任命される男性信者で、会衆において教理を教える立場にあること、教団から長老だけに宛てられる内部指示が存在すること、合議体を形成したうえで信者を破門処分にする決定をする権限を与えられていること等の様々な理由から、一般信者に比して「幹部信者」と位置付けるのが合理的であると判断される者。

(本報告書においても「幹部信者」として扱う)。

長老の教科書

・正式名称は『神の羊の群れを世話してください』という書籍。

・長老だけに与えられる情報が載せられたもの。エホバの証人以外の者はおろか、一般信者もアクセスできない情報が記載されており、同書籍自体の冒頭部分に「内密の情報が書かれている」旨や「エホバの証人組織の指示を個々の信者に正確に伝えることが目的である」旨が明記されている。

・したがってこの本は、①長老を含む信者たちの行動が教団の指示によるものであるかどうかという点、及び、②教団が指示を伝達又は伝播させる手段がどのようなものかを客観的に理解する上で重要な手掛かりとなるものである。

・本報告書においては『長老の教科書‐神の羊の群れを世話してください』と表記する。

伝道

 

(奉仕)

(野外奉仕)

(野外宣教)

・信者が文字通り一軒一軒の家や事務所、建物の部屋を直接に訪問する方法による布教活動のこと。近年においては、エホバの証人の出版物を並べた大型のカートを人通りの多いところに設置しそれを展示するとともに、カートの横で出版物を手で掲げてアピールする方式もとられている。

・「集会」と同様、エホバの証人の宗教活動におけるもっとも基本的かつ重要な活動の1つ。エホバの証人内では、この伝道を野外奉仕・奉仕・野外宣教など幾つかの別の表現を使って表すことが多い。伝道参加は「活発な信者」としてカウントされるか否かの指標となっており、連続6か月伝道に参加しない信者は「不活発」と呼ばれ、教団内でほかの信者と異なる扱いを受ける。

2世等

信者家庭の2世、3世、4世など、親や祖父母等の保護者が信者であり、児童の頃からエホバの証人として育てられたと自覚する人

排斥

・バプテスマを受けたエホバの証人信者が、教団が決める「重大な罪」を犯した場合であって,その罪を悔い改めていないと審理委員会が判断した場合に、強制的に教団から追放する処分を指す(「断絶」で上述のとおり「断絶」は信者自身がとる「手続」であり「排斥」は教団からの「処分」であるのが原則。)

・断絶同様、排斥を経るとその後の「忌避」の対象となる。

・なお教団が示す「重大な罪」には、以下のようなものが挙げられる。

「性的不道徳(同性間異性間を問わず結婚関係外の者同士の性的行為、ポルノを習慣的に見ること、電話やインターネットで不道徳な会話をすること他)、偶像崇拝(墓参りや、葬式・法事等での供養なども「偶像崇拝」にあたる)、背教にあたるとされる行為(教理に反する考えを故意に広めること)、仲間信者への中傷、エホバの証人内で分裂・分派を引き起こすこと、教団や教団幹部へのあからさまな反抗、排斥された人や断絶した人と不必要に交流すること、たばこの使用、ギャンブル、アルコールの濫用、その他多岐にわたる教団の禁止事項。

バプテスマ

全身を水に浸す形でおこなわれるエホバの証人の洗礼方式。

バプテスマを受けることで正式なエホバの証人の信者となる。

目ざめよ

ものみの塔同様、エホバの証人の機関紙である『目ざめよ!』誌のこと。長い期間「ものみの塔」とセットで伝道において配布されてきており、同宗教の教理の解説や信者等への教理実践の勧め等が掲載される。

ものみの塔

エホバの証人の教えにとっての最重要機関雑誌である『ものみの塔』誌のこと。 18797月創刊。同宗教の教理の解説や変更も主にこの雑誌により一般信者に周知され、毎週の集会においてこの雑誌の勉強会が行われている。