目的・メッセージ

1 弁護団結成の契機

これまで長年の間、宗教団体エホバの証人内部において「若年者に対する宗教の強制」がなされており、しかもその強制は過酷なまでの人権侵害・自由の制約を手段として行われてきたという指摘が多数の元信者たちからされてきました。昨年末の児童虐待定義についての政府の公式見解もまた、こうした実態を行政機関が確認したことを示しているのではないでしょうか1

しかしながら、こうした被害実態の本当の詳細については巧妙な仕方により「極めて公表しにくい」仕組みがとられているとの当事者たちからの指摘が多数ありますし、政府の公式見解が2022年になってようやく公開されたという事実はまさにこの点を裏付けているように思われます2

つまり、一般報道により「エホバの証人」に関する被害についての情報提供が大きな一歩を踏みだしたとはいえ、その本当の実態、すなわちどれほど広範囲であるか・どれほど長期間におよぶものであるか・どれほど過酷であるか・脱会した後もどれほど多大の影響をもたらし続けるのかなどの「真の詳細」については、一般社会のほとんどの人にはまだ「謎」でありその全容が社会全体に十分理解されているとは到底言い難い状況であるように思われます。

そのような中、「もし現に被害が存在しその被害を訴える人がいるのであれば、ましてやその被害が社会から隠されているのであれば、その状況に何としても取り組むのが弁護士の使命であり弁護士の存在意義の根幹である」というのが私たちの強い思いです。

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2 現時点の主要目的

私たち弁護団の現在の主要な目的は、エホバの証人について「可能な限り正確な情報を収集して分析すること」、そして「そうして得られた正確な情報を公開すること」です。

 一般論からは、弁護士の本来の職務は法律相談に対応し裁判等を通じて問題解決を図ることであることはいうまでもなく、当然、エホバの証人について議論されているテーマについてもそうした解決方法を検討し続けますが、本件についてはまずはこの「情報公開」こそが最大の責務と考えます。

「情報公開が第1の目的であれば、なぜ『法律家である弁護士』が取り組むのか」という素朴な疑問も浮かぶかもしれません。エホバの証人につき議論される問題を精査してきた私たちとしては、

  1. 上述のとおり、これら議論される問題の全体像、及び、関係者が置かれてきた凄惨な状況について、必ずしも社会的に的確な認識がされていないこと(さらに言えばこれらの人権制約は一般社会に隠されており、社会は何が起きているのかについて知らされておらず、関心を抱きようがない状況になっており、その状況がさらなる人権制約を拡大している状況)を強く感じており、これは「エホバの証人教団側の信者への指示の方法」及び情報についての隠ぺい体質が原因となっているのではないかと考えます。
     それと同時に、多くの方々が訴える被害実態は幼少期・若年期にスタートすることが多いことから「大人になった元信者たち」は過去の被害がどのように現在も深刻な影響を引き起こしているかを訴えるのに障壁を感じ、「今現在若年者である方たち」はどのように社会に訴えて助けを求めるべきかの知識が当然になく同様に障壁にぶつかっている現実を感じています。                     
  2. 実際にエホバの証人問題に直面してきた方々が異口同音におっしゃるのは「とにかくエホバの証人問題がどのようなものであるかを社会一般に知ってもらいたい」という言葉であり、「実態についての正確な公表こそが真の問題解決の決定的なカギである」とおっしゃる方は数知れません。そしてその一方で、家族や親族にエホバの証人信者がいるために、名前や立場を明らかにした上でそうした実態について公言した場合、そうした家族・親族との関係が深刻なレベルで破壊されるために、社会に対して訴えることができないという方は多くおられます。                      
  3. このような現実を踏まえ、裁判実務において間接事実を正確に積み上げるという「事実認定作業」を日々行っている弁護士であれば、こうした障壁を取りのぞき、情報集積と情報の正確さについての確認作業において役立てるのではないかとの強い思いがあります。
  4. そして何よりも、弁護士の究極の職責は「被害に遭う人に寄り添い、その言葉を代弁し、もって社会正義や安心できる社会の構築に貢献することである」と私たちは信じており、弁護士のグループが本件のような目的を掲げるとともに、エホバの証人に関する問題に取り組む社会的受け皿を提供するのは適切なことであると信じております。

こうした趣旨から、私たちはまず正確な情報の公開に最も力を入れる事からスタートすることを決意しています。「エホバの証人に関連する問題」を抱えているとお考えの皆様には、これからも継続的に問題についてのご報告・情報提供をいただき、私たちの分析の貴重な資料とさせていただくことにご協力いただけるよう広く呼びかけ続けたく存じます。

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3 具体的活動内容

以上のとおり現時点においては、

  1. エホバの証人に関わる問題についての情報提供の呼びかけと集積
  2. 本ウェブサイト「メインコンテンツ部分」における情報集積・分析結果の公表と社会への提言
  3. 様々な団体(各種支援団体・行政機関・医療機関・マスコミ各社を含みますがこれらに限りません)からのお問い合わせへのご対応や意見交換などにつき喫緊の対応として取り組むとともに、
  4. 被害を受けたとお考えの方々からの個別相談については、今後、状況が整い次第ご対応させていただく予定です。(但し、緊急性の高い重大案件についてはこの限りではありません)
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脚注

  1. 厚生労働省、「宗教の信仰等に関係する児童虐待等への対応に関するQ&A」、2022年12月27日
  2. 厚生労働省、「宗教の信仰等に関係する児童虐待等への対応に関するQ&A」、2022年12月27日