目次
序 本ページの目的
1 エホバの証人とは
2 エホバの証人は何を信じているのか
3 エホバの証人の社会学的特徴
4 エホバ
5 悪魔サタン
6 この世
7 ハルマゲドン
8 楽園
9 復活
10 ものみの塔
11 研究生・司会者
12 伝道者
13 バプテスマ
14 兄弟・姉妹
15 会衆
16 巡回区
17 集会
18 大会
19 王国会館
20 大会ホール
21 奉仕(主要なもの)
22 奉仕(その他のもの)
23 開拓者
24 排斥・断絶
25 復帰
26 不活発
27 審理委員会
28 忌避
29 教団の指導構造
30 援助奉仕者(奉仕の僕)
31 長老
32 巡回監督
33 支部(日本支部)
34 統治体
35 医療機関連絡委員会
36 委員会(その他)
37 べテル
38 ムチ
39 寄付
序 本ページの目的
本ページはエホバの証人について一般の方が理解するのに役立つと思われる用語・概念等の解説です。
エホバの証人に関しては、大多数の方が「何を信じているのか・どのような宗教なのかがわからない」とお感じになるかもしれません。同時に「エホバの証人が使用する専門用語がわからない」とのご意見も多く寄せられます。本ページは、私たち弁護団が考えるエホバの証人の概要・教え・彼らの使用する専門用語についての認識を説明することで、当弁護団のHP内の記載事項を可能な限り理解しやすくするとともに、広く一般の方に「エホバの証人」とはどのようなものかをご理解いただくことを目的としています。
1 エホバの証人とは
エホバの証人とは宗教団体の名称である。2023年時点で日本国内に約21万人、世界中で約850万人いるとされる。日本国内での実質的な組織的活動の開始は1949年。英語ではJehovah‘s Witnessと言うため日本でも「JW」と省略されることが多い。
「エホバ」とは彼らが崇拝する神の名前であり、信者はエホバという神の主張が正しいことを地球上で立証することが至上命題であると信じており、そのためにエホバの「証人」という名称を採用・使用している。
なお、エホバの証人が使用する宗教法人の登記名は「ものみの塔聖書冊子協会」であるが、宗教団体の名称としては飽くまで「エホバの証人」を称している。(「ものみの塔」という場合には、エホバの証人たち自身は自分たちの宗教団体ではなく彼らが用いる機関誌「ものみの塔」という雑誌を指すものと思われる。)
2 エホバの証人は何を信じているのか
エホバの証人は、ごく近い将来(自分たちが生きているこの現代)に、エホバが「ハルマゲドン」により「エホバの証人信者以外の全ての人々」を滅ぼすこと、及び、エホバの証人教理を信仰してエホバに承認される人々だけがその滅びを生き残り、信者達だけがその後に地球上に完全に新しく構築される新体制、つまり「地上の楽園」で永遠に生きられると固く信じている。この信仰は精神世界にとどまらない「現実のもの」であり、彼らは真剣に本気でこの教理を信じている。そのため、現実の生活全てにおける誠実かつ徹底的な信仰の実践が最大の特徴である。
このような理由から信者たちは、将来のハルマゲドンで滅ぼされないこと・エホバ神が正しいことを現実生活で実証する事を至上命題とし、教理において禁止されている事項(例:輸血・タバコの吸引・特定の性的行為・エホバの証人に批判的な教理に接する事・一般社会と必要最低限以上の深い関係を持つことなど)を絶対的に避けるとともに、他の人々が教団に入信すること及び信者の子供たちや今いる信者たちが教団を離れないことを目的として、必死とも思える努力を日々払い続けている。
このように、エホバの証人は真剣で現実的な確固たる信仰を実践するため、その真剣な信仰の実践が輸血拒否・子供への過酷な体罰・高等教育の否定・離脱した信者への忌避といった、現在議論される問題を提起しているものと観察される。
3 エホバの証人の社会学的特徴
社会学者の山口瑞穂氏は、教団について、「海外発祥」「宗教的な源泉がキリスト教」「新宗教」という側面を持つ宗教運動であると説明している1。
龍谷大学教授の猪瀬優里氏は、教団の特徴について、教団から離れたら不幸になるという脅迫的教義や、脱会者との会話禁止などの教義、一般社会との価値観の相違が大きいことにあるという。また、教団の内と外を明確に分け、メンバーシップを失ったものに対する厳しい制裁が教理 ・組織の両面で見出される、とも述べている2。
また一般の辞書によれば、原理主義とは「キリスト教で、聖書の無謬性を信じ、キリストの処女降誕・贖罪・復活・奇跡などを歴史的事実として認識する信仰上の立場」と定義されるところ、この定義によればエホバの証人はキリスト教原理主義者に完全に該当すると解される。
4 エホバ
エホバの証人が信じる唯一真の神であり現に実在する全知全能の神。全てのものの創造者であり、絶対的な崇拝の対象。自らの主張が正しいことを立証すること、ただ一人エホバ自身のみが崇拝されることを求めているとされ、エホバの証人はごく近い将来にこの「エホバ」が、自らを崇拝しないこの世の全ての人と全てのシステム(エホバの証人はこれを「この世」、「事物の体制」などと呼ぶ)を滅ぼし、エホバの証人信者だけがその滅びを生き残ると文字通りに信じている。また、エホバは全信者を日々観察しており、信者が内心で考える事や毎日の行動を全て見て把握しながら現在と将来の裁きの判断根拠としているほか、エホバの本質は「愛」であるとされる。
5 悪魔サタン
エホバと同様、身体は霊的存在だが「現実に存在する明確に人格を持った存在」であり、全ての悪の根源かつ一番最初のエホバへの反逆者である。 エホバの証人社会以外の全ての一般社会を支配しており、「この世」(エホバの証人社会に帰属しない全ての人類・社会構造のこと。別項)は全て悪魔サタンの影響を強く受けているものとされる。
最新の一例として、エホバの証人教理の最重要機関紙『ものみの塔誌 2022年11月号』において「サタンはメディアやインターネットを使用してエホバの証人幹部についてのうそを広める」旨が明記されるなど、エホバの証人に批判的・対立的な一般情報の根源は悪魔サタンであるとされ、極めて具体的に一般社会をコントロールしエホバの証人教団を攻撃する実在者として扱われる。こういた概念はエホバの証人が良く用いる「この世はサタンの支配下にある」という表現に集約される。
上述のとおり、エホバと対立する霊的な存在であり、エホバとこの世の支配権を巡って戦っており、ハルマゲドンでその決着がつくという教えになっている(教団では「宇宙主権論争」と言うが本サイトでは詳説はしない)。
6 この世
エホバの証人信者以外の一般社会を意味する。エホバの証人側の視点からは「サタンの支配するこの世の中」ということになり、「事物の体制」とも言う。全人類のみならず全ての政治システム・教育体制などのあらゆる制度も含む。エホバの証人以外の教理では、ハルマゲドン(別項)により、サタンの支配するこの世は終わり、エホバの支配する楽園が来ることになっているが、その際に終わらせられる側が「この世」である。
エホバの証人は信者ではない人を「世の人」と言い、反対に信者同士では「兄弟姉妹」と呼び合う。内と外を明確に分け、この世とエホバの証人の教団内の関係は明確に区別される。世の人はサタンの支配下にあり、エホバの証人から見れば「真理を知らない人」である。真理を知らなければ、来たるべきハルマゲドンの戦いでサタンと共に滅ぼされてしまうことになる。そのため、エホバの証人は世の人に真理(エホバの証人の教理)を知らせなければならず、布教(伝道)しなければならないと考えると同時に、兄弟姉妹(信者)でない限りは必要最低限の関係以外の深い関係を持つことは避けるべきとされ、彼らの視点からは「世の人」は、①救うべき対象でもあり、②深い関係を持つべきではない対象でもある。
【※7 ハルマゲドン 以降の項目は、近日中に公開する予定です】
脚注
- 近現代日本とエホバの証人,山口瑞穂,法蔵館,2022年
- 脱会プロセスとその後 : ものみの塔聖書冊子協会の脱会者を事例に、猪瀬 優理、宗教と社会2002 年 8 巻 p. 19-37